はじめてのお茶、かんたんに
お茶をいれる、と聞くと、きれいな茶器のセットや、むずかしい手順、慣れた手つきの茶師を思い浮かべる人も多いかもしれません。見た目は美しいけれど、なんだか難しそう。
でも、おいしいお茶をいれるのに、茶道も高価な道具もいりません。必要なのは、いくつかのシンプルな道具と、3つのポイント、そして少しだけ待つ気持ち。
その「待つ気持ち」こそ、お茶をいれることで得られるいちばんの癒しなのです。
用意するもの
急須、または蓋碗(がいわん)。 容量は150〜200mlくらいがちょうどいいです。家になければ、マグカップと茶こしでも充分です。
茶葉。 好きなお茶をひとつ選んで、そこから始めましょう。
お湯。 できれば浄水か軟水を使うと、甘みのあるお茶になります。
タイマー。 スマートフォンのタイマーで十分です。はじめのうちは、時間がいちばん調整しやすく、味にもいちばん影響します。
カップ。 好きなもの、手に持って心地よいものを選んでください。
3つのポイント:茶葉の量・お湯の温度・時間
お茶がおいしくなるかどうかは、ほとんどこの3つで決まります。
茶葉の量
お茶のいれ方には、よくある方法が2つあり、茶葉の量もちがいます。
小さな急須や蓋碗でいれる場合: 150mlの急須に、茶葉は約5g。茶葉が多く、お湯が少ないので、1煎は1分ほどで十分です。同じ茶葉で何煎もいれることができ、1煎ごとに味わいが少しずつ変わります。丸まった形の烏龍茶なら、急須の底にうすく広がるくらいが目安です。
マグカップでいれる場合: お湯300mlに、茶葉は3〜4gで大丈夫です。茶葉が少なく、お湯が多いので、3〜4分ほど長めに待って、味をゆっくり引き出します。いれるのは1〜2回ほど。1回で大きなカップにたっぷり1杯です。
1煎ごとの味の変化をゆっくり楽しみたいなら急須で。気軽にたっぷり飲みたいならマグカップで。どちらも、すてきな楽しみ方です。
お湯の温度
お茶によって、合う温度はちがいます。かんたんに言うと、若くてさわやかなお茶ほど低めに。焙煎が強く、発酵が進んだお茶ほど高めにします。
- 緑茶(碧螺春など):約85〜90°C
- 東方美人や蜜香貴妃など、繊細で蜜のような香りのお茶:約85〜90°C
- 清香烏龍茶(包種、金萱、高山烏龍など):約85〜100°C
- 焙煎烏龍茶、鉄観音、紅烏龍、紅茶:約95〜100°C
温度計がなくても大丈夫。お湯が沸いたら、ふたを開けて1分ほどおくと約90°C。3分ほどおくと約80°Cになります。
時間
急須でいれるときは、1煎目は40秒〜1分ほど。そのあとは、1煎ごとに10〜15秒ずつ長くします。
マグカップでいれるときは、お湯が多く茶葉が少ないので、3〜4分ほど長めに待ちます。
ひとつひとつの動作をゆっくりと
1. 急須を温める。 まず熱いお湯で急須とカップを温めて、お湯を捨てます。温まった茶器は、お茶の香りを引き出しやすく、お湯の温度も下がりにくくなります。
2. 茶葉を入れる。 温まった急須に茶葉を入れ、ふたをして軽くふります。ふたを開けて、香りをかいでみてください。温かさで目を覚ました茶葉から、最初の香りがふわっと立ちのぼります。
3. お湯を注ぐ。 急須のふちに沿って、お湯をゆっくり注ぎます。茶葉がお湯の中で自然に動くように。ふたをして、タイマーをスタートします。
4. 待つ。 これがいちばん大切で、いちばん癒される時間です。何もしなくていい。ただ待つだけ。静けさに耳をすませたり、窓の外をながめたり、ゆっくり呼吸をしてみたり。
5. お茶を注ぎきる。 時間になったら、お茶を最後の一滴まで注ぎきります。急須に残ると、茶葉がそのまま浸かり続け、次の1煎が苦くなりやすいからです。
6. ゆっくり飲む。 まず香りを楽しんでから、ひと口。最初のひと口を少し口の中にとどめて、香りと味わいを感じてみてください。
同じ茶葉で、何度でも
よい烏龍茶なら、同じ茶葉で4〜5煎いれられます。1煎ごとに味わいが少しずつちがいます。1煎目は香りがいちばん豊か。2煎目、3煎目は味がいちばんしっかりでます。そのあとは、だんだんやさしく、すっきりとした甘さになっていきます。
だから、1杯目を飲み終えても、すぐに茶葉を捨てないでください。もう一度お湯を注いで、少し長めに待ってみましょう。お茶が次に何を伝えてくれるのか、楽しみに。
緑茶と紅茶は、ふつう2〜3煎ほど楽しめます。
おいしくいれられなかったら
はじめてのお茶が思ったような味にならないのは、よくあることです。少し調整すれば大丈夫。
苦い・渋いとき: お湯の温度が高すぎる、時間が長すぎる、または茶葉が多すぎるのかもしれません。次は温度を少し下げて、時間を少し短くしてみてください。
薄い・味がしないとき: お湯の温度が低すぎる、時間が短すぎる、または茶葉が少なすぎるのかもしれません。次は茶葉を少し増やすか、もう少し待ってみてください。
香りが弱いとき: 先に急須を温めて、茶葉を入れたら軽くふって、香りをかいでみてください。香りが先に目を覚まします。
お茶をいれることは、毎回ちいさな実験のようなものです。少しずつ、自分がいちばん好きな味が見つけていくことができます。
技術ではなく、ひとつの時間
お茶のいれ方を覚えるのは、技術を身につけるためではありません。
忙しい一日の中で、何も急がない時間を自分にあげるためです。お湯をわかし、急須を温め、茶葉を入れ、お湯を注ぎ、待って、注ぎきる。ひとつひとつの手順が、あなたをゆったりとした時間に招きいれ、心を静めてくれます。
続けているうちに、きっと気づくはずです。お茶の味だけではなく、お茶をいれるその数分間を、いちばん楽しみにしている自分に。